惚れ薬
☆☆☆

「いくら持ってくると思う?」


公園のベンチに座り真弥がそう聞いて来た。


「いくらだろうね? 10万とか?」


高校生のあたしたちにとって10万円は大金だ。


「それだけあったら好きな服が買えるね」


初美が自動販売機で買ったオレンジジュースをひと口飲んでそう言った。


「だよね。毎月のお小遣いももう心配しなくていい」


あたしはそう言って笑った。


月に5千円や1万円のお小遣いじゃ、買いたい物なんてほとんど買えない。


こうしてジュースを飲むのだってどれにするか悩むくらいだ。


あたしは手の中にある紅茶を見つめてそう思った。


新商品が出たら飲んでみたいけれど、失敗すると嫌だから結局毎回同じものを買ってしまう。
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