ジンクス
トイレにはさっきからあたしたちの会話だけが響いている。


「それでも健は誰とも付き合ってないってこと?」


杏の質問に、あたしは曖昧に頷いた。


健の事をずっと見て来たのはあたしだけれど、正直自信はない。


きっとそうなのだろうという予想でしかなかった。


「よし、それなら今日は健のことを観察してみようよ!」


気を取り直すように大きな声で花梨がそう言った。


「健を観察?」


「そうだよナツミ。健がどんな女の子と仲良くしているか、チェックするんだよ! ナツミのお弁当を食べているから今はきっと彼女はいないと思うけど、本当に恋愛する気がないのか、確かめようよ!」


「う、うん。そうだね」


あたしは花梨の勢いに負けて、頷いたのだった。
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