あしたの星を待っている
私は瑠偉くんにお礼を言いたくても、気軽に会えない。
まず、夏休みだから学校で会わない。
隣に住んでるのに、家に行っても居ない。
居たとしても、彼のお母さんに会ったら引き留められるから面倒。
ラインのIDはおろか、スマホの番号も知らない。
それなのに黒沢さんは簡単に会えるんだね――。
って、私、何を今考えて、
「お前、なんであそこで倒れてたんだ」
「え?」
カフェからの帰り道、斜め前を歩く瑠偉くんがボソリと呟くように聞いてきた。
陽が落ちて幾分涼しくなったものの、それでも蒸し暑さが残る真夏の道をトボトボ歩く私たちの後ろを三日月が付いてくる。
今にも無くなりそうな細い細い月。
そして、今日も星は見えない。
「覚えてない、気が付いたら保健室だったから」
「そっか」
「軽い熱中症だって、でもお肉食べたら治った」
あの後、車で家まで送ってあげるという後藤先生の気遣いを断り、親が迎えに来るからと嘘をついて電車で帰った。
葉山先輩や、七海たちにも同じように嘘をついた。
とにかく、1人になりたかった。
1人になって考えたかった。
考えて悩んで、結果、思いついたのは、瑠偉くんにお礼を言いに行こうということだった。