愛は、つらぬく主義につき。
「・・・いいのよ、宮子ちゃんの人生だもの」

 瑤子ママが艶やかに微笑んで頷き返してくれた。

「ごめんねママ。・・・ありがと」

 血は繋がってないけど、あたしのお母さん。ずっと遊佐とあたしを見守ってくれてた。哲っちゃんと二人で。
 亡くなったお母さんの代わりに、限りない愛情を注いでくれたママ。これから絶対に恩返しするから。遊佐と二人で。
 小さく鼻をすすり上げて涙を呑む。
 ドレスを裾を持ち上げ一歩。足を踏み出し。ゆっくり祭壇を下りる。
 遊佐に向かって。一歩、また一歩。


 目の前に立ったあたしを見上げる、いつ見ても極道には勿体ないキレイな顔。クセのある髪はワックスでふんわり後ろに流してる。
 あたしの愛しい男。世界一大事な。
 ・・・目の下のクマ。ちゃんと寝てないんでしょ、バカね。イイ男が台無し。
 
 最後に会ったの・・・いつだった? なんかもうずっと何年も会えなかったみたい・・・・・・。
 遊佐は逸らすことなく、あたしを見つめてる。あたしもただ。何があっても退かない覚悟で、見つめ返す。

「・・・・・・ナニやってんのオマエ」

 やっと口を開いた遊佐は、思った通りのコトを言って目を眇めた。

「こんなことしてオレが喜ぶとでも思った?」

 冷たい眼。・・・相変わらず難攻不落な男。
 けどあたしも怯まない。
 
「泣かせるよりはマシよ」

 一瞬。表情が歪んで目を逸らす遊佐。

「・・・ユキ姉はお節介なンだよ。やっと諦めがつくって時に、全部ぶち壊してくれるとかさぁ・・・」

 片手で顔を覆うようにして呻いた。自嘲の笑いが口許に覗いて。

「宮子の為だってカッコつけて、自分だけ逃げようとするから、まんまと仁兄に横取りされるんだって言いやがった。・・・腐ったプライドごと海に沈めってよ」

 ユキちゃんがそんなコト。思わず目を見張った。

「・・・・・・オレなんかより仁兄のほうが、オマエは幸せになれんだよ。なんで分かんねーの・・・?」
 
 今まで見たことがない暗い笑み。絶望だけを漂わせてあたしの胸を切り裂く。痛みが走って、辛くて苦しい。それ以上に。腹が立った。
 なんでって。
 分かってないのはあんたでしょ、って。

「・・・・・・あの事故に囚われて引き摺って。一人で傷舐めて、勝手に傷口広げて。・・・自分だけが血を流せば済むって思ってた? どんだけ独りよがりよ、あたしはあんたの何なのっ? あたしのシアワセが何だと思ってんのよっっ」 

 拳を震わせ、上から思い切り遊佐を睨めつけて。
 あたしの張り上げた声はチャペルに大きく響き渡った。
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