毒舌社長は甘い秘密を隠す

「すみません。今自宅に着くところでして」
《わかった。車を出すから、用意しておけ》
「えっ、あのっ」

 動揺と同時に電話が切れてしまった。

 車を出すって……社長が来るってことだよね!? 急がなくちゃ!

 休みの間に、ある程度荷物の用意はしておいたけれど気が逸る。せめて何分後に着くとか言ってくれたらいいのに、本当に社長は九条さんと違って身勝手だ。

 こんなに振り回されても、彼のことが好きなんてどうかしてる。
 でも、理屈じゃ説明できない気持ちが、彼に出会ってからずっと胸の奥にあって……。

 自宅に着くなり、急いで荷物を確かめる。
 数日分の洋服と眠る時のパジャマ、下着類。日常的に使っている雑貨と小説を数冊。

 それから、眠れない時に幼い頃から読んでいる絵本も。


 三十分ほどで社用携帯が再び鳴り、マンション前に到着したと彼が告げた。

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