毒舌社長は甘い秘密を隠す
満天の星に想いを秘めて

side 優羽・前編


 ――社長の家で暮らすようになって、約三カ月。
 私の想いを知らずにいる彼とは、未だ平行線のままだ。

 彼が出張先から買ってきてくれたお土産のルームウェアは、あれから数日着ただけ。
 気候が初夏の陽気になってきて、最近は自宅から持ち込んだパジャマを着るようになった。

 それでも、彼は私を毎夜抱きしめてくる。
 私とアルパカの共通点はどう考えてもないはずなのに。

 会社でも家でも私といて彼が癒されるとは思えず、とうとう理由は迷宮入りだ。

 彼はどうして私と暮らし続けることを選ぶのだろう。
 縁談にも前向きな様子なのに、私を自宅に置いていて不都合がないとは言い切れない。

 スケジューリングだってしなくてはいけないから、縁談がどのくらい進んでいるのかを聞いても、彼は話してくれなかった。

 だけど、片想いしている身としては幸せだから、このままでいたいとも思う。
 先に彼が眠ってしまっても、整った寝顔を眺めていられるし、私の作る食事を美味しいと言ってくれる。
 なにもしなくたって、彼といられるだけでいい。

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