毒舌社長は甘い秘密を隠す

「すぐにとは言いません。もちろん、いいお返事をお待ちしておりますが、じっくり考えてみてください。……さて、仕事の話はここでおしまいにしましょう」

 にこっと微笑んだ九条さんは、張りつめた空気を一瞬にして和やかなものに変えてしまったけれど、私の心は大きく揺れ始めていた。

 もし、九条さんの会社で働くとなれば、仕事をしていく上でとても大きな経験になると思う。それに、あらゆる都市開発業に力を貸している企業だからこそ、不動産業界の未来の一端を担うような場面を見ていくことになるだろう。
 それに、九条さんはうちの社長のような毒舌でもないし、穏やかに仕事ができると思う。我儘で振り回されることもないし、急な予定を詰め込みまくってスケジューリングに苦労することもなさそうだ。

 でも、井浦社長の元を離れて仕事をする自分がイメージできなくて……。


「沢村さん、井浦さんのことが好きでしょう?」
「えっ!?」
「正解ですか。やっぱり私の予想どおりでしたね」

 身の振り方を真剣に悩んでいたら、九条さんの問いかけに不意を突かれてしまった。

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