毒舌社長は甘い秘密を隠す

 夜風で少し乱れてしまったダークブラウンのロングヘアを手櫛で整える。
 一日働いた後の顔は、思っていたよりも疲れているように見えて、ついため息が出た。
 もっと美人だったらよかったのに、いくらメイクをしても、特徴のない自分の顔はあまり好きじゃない。
 それに、同僚秘書のようなスタイルがうらやましく思うのは、百五十八センチの小柄な背丈のせいだ。


 自席の引き出しから社用携帯を取って、再び施錠して部屋を出た。社長は十八時頃から会食で出かけているから、社長室は真っ暗だ。

 ついでに、アルパカの様子でも見ていこうかな。

 Fluffy ALPAでは、なぜかアルパカが飼われている。
 近年需要が増えてきたペット可物件を多く扱っているから、そのPRのためだと聞かされているけれど、なぜアルパカなのかは、秘書の私でもよくわかっていない。
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