毒舌社長は甘い秘密を隠す

「一昨日と昨日のことは、忘れろ」
「……それは難しいですね。どうしたって見てしまったものは消せません。社長のあのようなお姿や暮らしぶりは、鮮明に記憶にしています」

 アルパくんと添い寝するほど触感が好きだということや、自宅の寝室の様子が意外だったことも、もしかしたら私しか知らないのかもしれない。
 それに、社名にまで影響させるほどの〝もふもふ愛〟は、彼からは想像できないことだった。

 だからこそ、また毒舌を浴びせられるかもしれないけれど、社長が困っている様子が伝わってきて茶化してみたくなった。


 しばらくの沈黙のあと、社長は深いため息をついて背もたれによりかかる。


「ところで、昨日九条さんとなにを話したんだ?」
「お伝えした通りです。物件を探していらっしゃるそうで、私の好みを聞かれたんです」
「……九条さんが君の好みを聞いてどうするというんだ?」

 さすがに、九条さんとの秘密は守らなくてはと口を噤む。
 いずれ社長にも本人の口から語られる時が来るはずだ。

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