毒舌社長は甘い秘密を隠す

「私は買ってきただけですので」
「そんなことないよ。本当に助かった」
「留美さんって、どうやってお客様の好みを把握されたんですか?」
「お出ししたものに、どれくらい口を付けるかで反応を見たりしてるの。あとは先方の秘書さんから情報をもらったりして」
「なるほど、そうだったんですね」
「昨日は、そのあとまっすぐ帰ったの?」
「はい」

 多くは語らず、昨日のことは留美さんにも秘密にした。

 以前、少しの間でも社長に恋をしていたことは誰にも気づかれていないし、また片想いが始まりそうだなんて口にできるはずもない。
 社長と秘書の関係になってしまった今は、私の気持ちを仕事に持ち込むとややこしくなるからだ。

 それに、諦めたはずの想いが、まだ胸の奥に残っていたなんて自分でも驚いている。
 この気持ちは社長に告げることも控え、ずっと秘めておくべきだ。それが、仕事を円滑に進めるための最良の選択だと思う。

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