シナリオ・レッスン
「ああ、うん。そうそう、今度の新入部員勧誘会での舞台、何作かあげてみたんだけど、まだ決まらなくてさ。とりあえず、読み合せをして、台本研究がしたいんだけど、相手役のとこ、読んでくれない?」
「そんなの、部員に頼めばいいのに」
「そう言うな、みんな結構忙しくて、捕まらないんだ」
総勢40名以上の部員がいるのに?そんな事は無いと思うが。

「フフッ。どうせ私はヒマ人です」と、スネてみる。
「そういう意味じゃない」と、少しうんざりしたように溜め息をつく。こういう表情はかなり大人びている。何気ない態度だが、距離を感じる瞬間だ。

先に、どんどん大人になってゆく。

「あのなあ、ある程度の情感をもって朗読ができて、会話の微妙な間、のようなものも理解してると見込んで、頼んでるのに」
「まさか、ロミオとジュリエットとかじゃないでしょうね?冗談きついですよ先輩」
「ははは、違う。『トリスタンとイゾルデ』」
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