桔梗の華 ~途中公開~
「さっそくか…」


瑞様は外の方に目をやる
私にも分かる。
何か大きなモノがこっちに来ている



銀色の数珠を手に巻いた瑞様は
村人に避難の声を掛け始めた。
私も外に出ると

「また妖怪じゃー、妖怪が攻めてくるぞー」

バタバタと走り回る村の人達

また?それって妖怪がいるのは
当たり前みたいな言い方じゃない


「桔梗、おぬしも隠れておれ!妖怪の狙いは勾玉じゃ。絶対渡してはならぬ!」

「瑞様は?!一緒に逃げようよ!」

「わしはこの村を守らねばならぬ。」

守るって…どうやって?!


何かブツブツと唱えて数珠を握ってる手を
空に翳した。
ハッキリ見える…
銀色のオーラが村全体を包んでいる

「く…来るぞ!」


瑞様の見る方向を辿ると
見たことも無い化け物の大軍が
こっちに向かってきた。

瑞様の張ってる結界で妖怪達は
入ってこれずウヨウヨと周りを飛び交う

「桔梗!おぬしは森へ走れ!ここにいては危険だ!」

え?森の方が危険じゃないの?!

「あの森は翠子様の力で妖怪は入ってこれぬ!早く!走るんじゃ!」

うぅっ…と力を消耗している瑞様は
必死に私に逃げろという。
ここにいても無力な私は森へ走った。





村の裏に続く森の中を
御神木目指して走る
妖怪達は私の跡を追ってくるが
森の中には入ってこようとしなかった。


「はぁっ。はっ…」

思いっきり走って御神木はすぐ目の前に見えた

けど物凄い邪悪な妖気が近くに感じて
すぐそこって時に黒いモヤが私の目の前に
現れた。


「はぁはぁ、なんで?妖怪は来れないんじゃ」


黒いモヤからは男の人が出てきた。
でもすごく嫌な感じが男から感じる
握りしめていた勾玉をポケットに突っ込む


「ほう…やはり金源の勾玉は復活したか」


漆黒な長い髪に髑髏の兜を被って
キリっとした目つきは恐怖が込み上げてくる。


「あ…あなた妖怪?ここは入ってこれないんじゃ。」


「ふん、あの巫女の結界如きこの闇雲に効くわけなかろう」

闇雲と名乗る男は鋭い目を私に向ける

「お前、翠子…いや違うな。生まれ変わりか」

この妖怪は一体…

「やはりあの巫女にもその勾玉を消し去る事はできぬか」

くくくっと笑う闇雲

「お前には扱えぬだろ。我に譲れば命は取らぬ」

「な、」

瑞様がこれを渡したら大変な事になるって
言っていた。
絶対この男に渡してたまるか、


「強情な…」


冷めた表情で私に指を向けると
男の背後から触手が私を縛り付ける
き…気持ち悪い…


「殺すぞ」

ゾクっと、悪寒が走り
頭が危険信号を出していた
触手はギチギチと強く締め付ける


意識が……









『おい、お前』


な…に…
頭の中に声が聞こえる


『唱えろ』


何を唱えるの?


『俺を解放しろ』


どうやって…?




苦しながらも闇雲を見ると
冷めた表情で私を見ていた
その後ろにある御神木が
ホワッと光を放っていた。



『死にたいのかお前』


だから何を唱えるのよ



でもこのままだと持たない…
息が限界に達した時
無意識に【解】と掠れた声で唱えていた



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