愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「好きにならないって……なんで?」
「それは自分が一番良くわかっているんじゃないかな?」


そう言われてつい黙ってしまった。
心さんはわかっているんだ。私が心さんに藤堂先生の面影を見ようとしていることを。無理に恋愛としての好きになりうとしていることを。


「俺は里桜ちゃんが好きだよ。でも、いつまでも本気で好きになってもらえないのは辛い。君が俺といても心から笑っていないのは辛い。そしてなにより、真紀から君の全てを奪う自信はない」
「どうして……?」
「里桜ちゃんも好きだけど、真紀も大切だから。やっぱり真紀が辛そうなのは見たくない。この前、クリニックの窓越しに真紀に手を振ったろ? なんか後味悪くてね。その時思ったんだ。俺の中で里桜ちゃんと真紀は同等で、どちらかを取ることは出来ない。むしろ、二人が幸せでいるところが見たいって」


心さんはひとり楽しそうに笑う。
つまり、心さんは私が好きだけど、同じくらい大切な藤堂先生が傷つくくらいなら私と別れるということ?
どちらかをとれないなら、自分が身を引くだなんてそんなの自己犠牲ではないか。
もとはといえば、私が心さんの気持ちを利用しようとしたから……。


< 167 / 262 >

この作品をシェア

pagetop