愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


二人で電車に揺られ、三駅先の最寄駅に到着する。


「里桜ちゃん、ご飯はどうするの?」
「昨日の残りと作りおきがあるので、それを食べますよ」
「ちゃんと作ってるんだ? 偉いね」


感心したように言われるが、料理はもともと好きな方なので私にとっては苦ではなかった。


「そっか。良かったら、このあとご飯にでもと誘おうかと思ったんだけど……、あ、無理そうだな」


薬局の方に視線を向けると、心さんの同僚らしき人が慌てたように手招きしている。薬局の待ち合い室には患者さんが沢山いた。夕方に診察に来た人たちが薬局へ処方箋を持ってきたのだろう。


「混んじゃいましたね」
「残念」


苦笑しあって、1階の入り口前で手を振って別れる。
心さんは気さくだ。なんだか親戚のお兄ちゃんを思い出すなと思う。心さんを少し見送ったあと、帰ろうと踵を返す。その時、藤堂クリニックの受付に白衣姿の藤堂先生が見え、振り反り様に一瞬だけ目が合ったような気がした。







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