愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
一体何が起きたのか。
驚いて先生の肩を叩くが、一向に放してくれない。
強くて奪うようなキス。なのに甘くて優しいから、抵抗する力が弱くなっていく。
叩いていた手は、いつしか服を掴むことしか出来なくなっていた。
頬には先生の大きな手が添えられており、それは優しいのに逃がさないとばかりにしっかり拘束されている。
そして、満足したのかチュッと恥ずかしげもなく音を鳴らして先生の唇が離れていった。
「あっ……」
見上げた先生は、真っ赤になって力なく壁に寄りかかる私をなんとも色っぽい目で私を見下ろしていた。そしてニッと口角をあげ、濡れた唇を拭う。
「デートの終わりにはキスが定番だろ」
優しい甘い声でそう囁くとゆっくりと私から離れた。
「じゃぁな、オヤスミ」
軽く手を上げて、先生は私の部屋の玄関を閉めた。
隣の部屋の玄関が開く音を聞きながら、私はその場に崩れ落ちる。
お気に入りのパンプスの上に座ってしまったが、気にする余裕などない。
「何、今の……」
呟いた声は微かに震えていて、自分の息が熱い。胸の奥が熱い。
鏡を見なくても顔が茹でタコのようになっている自覚はあった。
「先生とキス……?」
したよね? 今。
自覚すると、カッと身体から汗がでる。
どうして? どうしてキスしちゃったの!?
抑えた口元はまだしっとりと濡れている。それがさらに生々しさを感じさせた。
なんとも言えない様々な感情が押し寄せ、言葉が出ない。
わけがわからず、ただ頭を抱えるだけだった。