愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


リビングに目を向けると心さんが寒そうに身体を丸めて眠っている。寝ながら豪快にくしゃみをしたようだ。


「ったく。おい、心! 風邪引くぞ」


さっきの纏う甘い空気は完全に消え去り、藤堂先生はいつもの声で注意をしてリビングから出ていった。寝室へ行ったのか戻ってきたその手にはタオルケットがあり、それを掛けてあげている。
その少しの時間は私の心臓の音が小さくなるには充分だった。 無意識に息を詰めていたようでこっそりと大きく深呼吸する。


「朝比奈」


呼ばれてハッと顔を向けると今までと変わらない表情の藤堂先生がリビングから絆創膏を片手に手招きしていた。


「来い。貼ってやるから」


治療をしてくれるつもりなのだろう。もうさっきの雰囲気は完全になくなったが私の足は動かない。
それに対して先生は苦笑した。


「悪かったよ。その……ちょっとした悪ふざけだった。なにもしないから消毒させろ」
「悪ふざけ?」


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