愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
悪ふざけであんなことをしたというのか。先生の言葉に胸の奥がズキッと痛んだ。
ふざけてあんなことするならそれこそ悪趣味過ぎる。
「朝比奈の反応って面白いんだよ。だからつい」
「ついってなにそれ……。酷い、酷いですよ! 藤堂先生って本当に女たらし! 最低!!」
怒りで握った拳をカウンターキッチンにドンッと振り落とすと、藤堂先生は怯えたように顔を引きつらせた。
「待て待て。そう怒るなよ」
「怒るな? よく言えますね」
「ごめん」
苦笑いで謝る藤堂先生にツカツカと近寄り、その手から絆創膏を奪った。
「このくらいの傷、藤堂先生のお力を借りなくても一人で出来ますから」
そう言って目の前で絆創膏を破りグルグルと巻き付ける。不格好になったが、何とか貼れた。
「上手に貼れたねー」
まるで子供に言うように優しく言いながら、パチパチと拍手する。
なによもう、バカにして!
「もう帰ります! おやすみなさい!」
そう言い捨てて先生の部屋を飛び出したのだった。