愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~

その言葉にポカンとしてしまった。キスした後の時のような、軽い感じの謝罪ではなく本当に謝っている。
まるでそれは項垂れた大型犬のようだ。

飴玉ひとつで謝罪だなんてなんだか可愛い。
そもそもなんで、のど飴なの?
わけがわからず、つい「ふふ」っと笑い声が漏れてしまい、とっさに口を隠して閉じる。私の小さな笑い声は藤堂先生には聞こえなかったようだ。

だからかな。なんだか意地悪したくなってきた。


「のど飴ひとつで許すとでも?」
「ポケットにそれしかなかったんだ」


藤堂先生もきっと仕事帰りだ。ということは、これはクリニックの受付にあったもの?
たまたま持っていた飴玉で許してもらおうとするなんて、それはそれで何となくスッキリしない。


「あんな悪ふざけが、飴玉ひとつかぁ」


謝るときに何か対価として別に物がほしいわけではない。むしろ貰うと困る方だが、物があったらあったでそれが適当だと少しショックだ。






< 85 / 262 >

この作品をシェア

pagetop