星降る夜空に祈りを込めて
あの時からすでに五年が過ぎた。
二十代前半で負った傷は、まだ完璧に癒えることは無いけれど五年の月日で少しは薄れてきたのではないかと思う。


私は今年も暖かな春を、少しの悲しみはあれど穏やかに迎えている。


私はあの後から木を隠すなら森の中という訳で、一年と少しを地方の主要都市で過ごした。
そこで夢だった助産師学校に入り三年前に助産師の資格を取った。


そして、この穏やかな気候の瀬戸内の島に移住して看護師兼助産師として、この離島地域の医療を担う診療所で働いている。


ここには、長年この地域の医療を担ってきたベテランの中嶋医師とその奥様で看護師の梅乃さん。


さらに、その診療所で薬剤師をする河野さつきさんというベテランのメンバーに囲まれて、私は日々仕事をこなしている。


ここは気候と同じくらい住む人々も暖かく穏やかで。
突然移住してきた小娘な私を、暖かく迎え入れてくれた。
なにより看護師と助産師の資格を持っていたのもあり、島の人達には大変喜ばれた。


若い人からお年寄りまで、みんなに長い事居ておくれと言われるし、中にはうちの孫の嫁にやら、息子の嫁に等と声を掛けてくれたりする。


島らしい暖かさに、私はその辺は笑みでスルーしながらも結婚はしないから出て行かないよ!
ずっとここに居るよ!
家買ってるでしょ?


などと、笑いながら返していた。

< 14 / 56 >

この作品をシェア

pagetop