星降る夜空に祈りを込めて
四月、桜も咲く頃だった。


その事故は起きた。
高速道路での、大型車を含む大きな規模の玉突き事故。
その事故に出かけていた帰り道の両親が巻き込まれ、そして二人はなす術なく亡くなった……。


私が短い期間に立て続けに大切な人を失くした頃、彼から私には連絡すら来なくなっていた。
大切だと思う人達を失った私はぽっかりと大きな穴の空いた心と、どうにも動き出せない身体とを持て余して、それでも考えていた。


私に遺された家や土地は、一人っ子で他に親族も居ない私には大きく重く残った。


その時フッと気付いた、大切な人が居なくなってしまったこの土地に、もう私は未練がないことに。
そこからの私は、ある意味吹っ切れた事もあり元からあった行動力で、わずか二週間で少し仕事をしながらも、するべき事を全て片付けてしまった。


そうして片付けた両親との思い出の地を離れ、私は私を誰も知らないような遠く離れた土地に移り、新しい生活を始めることにした。


その準備が整い、旅立つ頃。
世間が連休に入る頃になると、忘れようとしていた彼から連絡が来ていた。
けれど、それを読む事も返事を返すこともしなかった。


そして、その未読未返信の翌日。
そのままにスマホを解約して新しいスマホを手に入れると、それには誰かの連絡先などもろくに入れることは無いまま……。
私は新しい日々へと踏み出す一歩を進めたのだった。
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