一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 宝来寺さんがいなくなったと聞き、意を決して麻生流司に電話をしたが、居場所は教えてもらえなかった。

 宝来寺さんと一緒にいるのかと聞いても、

『違うと言っても、どうせ信じないんでしょう?』

 などと言われ、明確なことは何ひとつわからない。


 しかし、石神さんから真壁さんに着信があった。

 宝来寺さんのGPSから走っている経路がつかめたので、これから追跡するとのこと。

 真壁さんを連れていくため私の自宅に寄り、ついでに私をビジネスホテルまで送っていくと。


 ビジネスホテルには行かない、このまま着いていくという私と、絶対に連れて行かないという石神さん。

 お互い意地の張り合いとも言えるような競り合いが続いた末、私が勝利した。


 ひとりでおとなしく待っているなんて、絶対に嫌だった。

 たとえ何もできなくても、足手まといにならないのならば。

 1キロでも、10キロでも近く、宝来寺さんのそばにいたい。


 それに……。


 この状況になってもまだ、麻生流司が警察に逮捕されることを、止めたいと思ってしまう自分がいた。

 私が行けば、なんとか、警察のお世話になる前に示談にできるかもしれない。

 宝来寺さんや石神さんは納得してくれないだろうけど、その2人だって、私の説得になら、応じないとは限らない。


 ……これが、「甘い」ということなんだろうか。

 あんなにも怖い思いをしても、大事な人たちがこんなにも迷惑を被っていても、私はまだ、彼をかばっているのだろうか。




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