一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「……やっぱり、雫じゃないと、ダメ?」

 麻生流司が近づき、自由のきかない俺の真隣にしゃがむ。


「実は僕もなんだ。……僕たち似てるかもね」


 嘲るように静かに笑うと、俺に見えるようにPCの画面を向けた。



 彼女が、俺の目の前、すぐのところにいる男に、犯されている、映像。



 ……いや、犯されているというのは、違う。

 彼女は、……喜んでいるように見えた。

 熱くとろみを帯びた瞳でカメラを見つめ、唇を艶めかしく開き。

 男に芯まで突かれるたび、脳髄まで響きそうな甘い声で鳴いて、

 柔らかそうな白い乳房を上下に揺らしている。


「あっ、やだぁ、おっきくなったぁ!」

「マジかよ~、反応すんのかよ」



 マジかよ、は、俺の台詞だった。

 彼女が他の男に抱かれているのを見て、反応する……?


 情けないことに、しっかりと反応していた。

 想像の中で、何度も何度も何度も抱いた、彼女が、

 こんな甘い声を出して、男を求めるのかと、知って。


 その相手が自分じゃないことに嫉妬で狂いそうになりながらも、

 抱きたい、抱きたいと体に思わせるには十分な素材だった。


 今更、だったのかもしれない。

 俺はずっと、自分じゃない誰かに向けて微笑む彼女の写真に恋していた。

 自分に微笑んでいるのではない笑顔でも、

 自分に向けてのものだと勘違いさせて、憧れて、愛して来た。


 彼女が自分のものでないことなんか、

 本当はずっと、ちゃんと、わかっていた……。



「うふ、もう出ちゃいそう? いいよぉ、出しちゃっても」


 女の艶めかしい声に煽られて、声が漏れる。

 ぬめりを帯びた直接的な刺激は、単純な男の脳みそを錯覚させるのにそう時間はかからなかった。


「あっ……くっ……」


 見ちゃいけない、見ちゃいけないと理性が叫んでいた。

 それでも俺は、動画の彼女から目を離せない。


 彼女の甘い嬌声に混じって、男の声が彼女を優しく呼ぶ。

 彼女を愛していて、愛していて、たまらないといった優しい声。

 男の様子を、男の目で見るからわかる。

 彼女の中が、どれほど男を幸せにしてくれるかということが。


 俺も、抱きたい。

 彼女を、抱きたい。


 追いつめられた身体が緊張と弛緩を激しく繰り返し、上半身が小刻みにはねた。

 必死に噛み殺していた声も、鼻から抜けて情けない喘ぎに変わる。

 血液が沸いて、もういくらももたないと思った直後、声が掠れ――、

 俺は、あっけなく陥落した。



「……やべえな、俺ちょっと勃ってきちゃった」

「マジかよ、男だぜ」

「なあ、口開けろよ。咥えろ」


 顎をつかまれ、まだ少し柔らかいそれを、口内に押し込まれる。

 力が入らない。

 このままこの男に犯されたとしても、抵抗する力は残っていない。


 喉の奥を遠慮なく突かれ、うぐ、とうめき声が出る。

 男の腰の動きが速くなり、湿った下腹に顔を押さえ付けられたかと思うと、

 明らかに唾液とは違う味のぬるりとした液体が、口いっぱいににじんでいた。


 死んでも飲みこんだりしない。

 俺の体内に入れてなるものか。






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