一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

ご機嫌ナナメのわけ

「もう1回お願いします」

「えぇ~伶くん、じゅうぶん欲しいもんはもらってるよー? ほら、コレとかコレとか」


 カメラマンの塚本さんが、撮ったばかりのデータをモニターに映す。

 宝来寺 伶は、あの吸い込まれそうな綺麗な瞳で、真剣にチェックをしていた。


「……もう1回お願いします」


 お願いします、という言葉を使ってはいるが、人にものを頼む態度ではない。

 これは……そう、“脅迫”だ。


 長くなりそうだ、と思ったのか、手持ち無沙汰になりかけたアシスタントのひとりが、退屈そうにスマホをいじり始めた。

 ギロリ、と鋭い視線が飛んでくる。

 それに素早く反応するように、マネージャーの石神さんが「すみません、ちょっと」とアシスタントに声をかけた。

 彼は二度と生きて帰って来られないんじゃないか、そんな物騒な想像がよぎり、ぞっとする。



< 17 / 122 >

この作品をシェア

pagetop