月と星
「…美化しすぎじゃない?」
蓮兄が少し笑いながら言った。
その横顔を見ながら、あたしがこの人を好きになり始めたのはいつだったけ、とふと思う。
・・蓮、ではなく「蓮兄」と呼び始めた日。
自分の兄だと自分自身に言い聞かせるために。
あたしは妹なんだと、再確認するために。
それは、いつだったんだろう。
「・・見守ってるのは、同じかも」
不意に、蓮兄が呟いた。
「ずっと、見守ってるのはこの月と同じ」
視界がぼやけて、揺れた。
締めつけられるように苦しい胸と、やけに冷静な頭の中。
・・あたし、本当に愛されてるね?
妹として。
大切な、家族として-。
「じゃあ、百合は星?」
唐突に蓮兄が聞いてくる。
・・星、か。
控えめに光る無数の星。