赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う



「重要参考人が揃いましたな」



 そう言ったウォンシャー公爵の視線の先にあるのは、囲むようにした配置された議席の中央にある証言台。

そこに立っているのは前国王の毒殺に関与した前王医のメドレス伯爵と元メイドのヨエルだ。


「ウォンシャー公爵……ネズミのようにコソコソとなにかしていると思えば、このように罪人の手助けをしていたとは嘆かわしい」


 大公は白々しいまでに自分を正当化する。
その顔に浮かぶのは余裕の笑みで、証人を前にしても動じない大公が狂気的に見えた。


「議会というのは本来このように当事者と証人、そして裁く者が揃って初めて公正な判決をくだせる。そうは思いませんか、法の番人ノーデンロックス公爵」


 教会で教皇を務めるガイルモント公爵が、大臣の名家であり法を司る権力者のノーデンロックス公爵に話を振る。


「確かに、これは良い機会かもしれませんな。陛下の話を直接聞くことができますし、私情を挟む気はありませんが前王の代から騎士として仕えるセントファイフ公爵が前王妃を手にかける手助けをしたとは思えません」


 ノーデンロックス公爵は「再度、議会を執り行いましょう」と公爵に進言する。


「まぁ、いいだろう。それで国王陛下及びントファイフ公爵はなにを証言するのか」


 大公は深く議席に腰を下ろすと、楽しそうに目を細めた。


「俺たちも証言台へ立ちましょう」


 こちらを振り返ったスヴェンに、アルファスとシェリーはうなづく。そして証言台に立ったシェリーたちは、並んで大公をまっすぐに見据えた。


「今回の前王妃の毒殺未遂の件は、二年前の前国王の死に繋がっています。そこでまず、前国王陛下の死因について知る者から証言をしてもらいます」


 スヴェンの視線が、同じく証言台に立っているメドレス伯爵と元メイドのヨエルに向く。メドレスは大公が恐ろしいのか、顔を俯けたまま口を開く。


「大公殿下の指示の元、心臓発作などと嘘の診断をしましたが、あれは紛れもなく中毒死でした」

「そして私が……毒が付着した薔薇を前国王陛下の部屋に置きました」


 続けてヨエルが発言すると、議会の空気は一気に張り詰める。ノーデンロックス公爵は「なんということだ」と顔を真っ青にしていた。


< 123 / 135 >

この作品をシェア

pagetop