赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「これ……肌身離さず持っていてくれたのですね」
銃弾を受け止めた首飾りを見つめていると、視界が涙でグニャリと歪む。
(スヴェンは様がご無事でよかった。お父様、私の愛する人を守ってくださってありがとうございます)
感謝を込めて首飾りに口づけると、シェリーはたまらずスヴェンの首に抱き着いた。
「おっと、泣かせてすまなかったな」
シェリーの体を片手で受け止め、あやすように頭を撫でてくる。それに涙腺は崩壊して、スヴェンの名前を呼びながら子供のように泣きじゃくった。
「また、おいてかれてしまったのかとっ」
「気づいていたら体が勝手に動いていたのだ。お前をおいて死ぬつもりは毛頭なかった。この首飾りが純鉄でできていたおかげで命拾いしたな」
撃たれたというのに平然としている彼は、やはり人並み外れた肉体の持ち主だとシェリーは苦笑いする。
「ぎこちないが、ようやく笑ったな」
目を細めて笑うスヴェンに「え?」と首を傾げる。すると頭に乗っていたはずの手は頬に当てられ、そのまま涙を拭われた。
「泣いているお前も美しくはあるが、胸が痛む。シェリーにはずっと、幸せに笑っていてほしいと思っている」
「スヴェン様は……本当にお優しいのですね」
「シェリーにだけだ」
スヴェンの唇が慈しむように瞼に押し付けられると、苦しかったはずのシェリーの胸には温もりが広がっていった。
「約束……今、あなたに甘えてもいいでしょうか」
「なんだ? なんでも聞こう」
スヴェンは少しだけ首を傾げて、答えを待ってくれているようだった。シェリーは思い切って、大胆なお願いをする。
「ここに……口づけてはくれませんか?」
彼の手を自分の唇にもっていくと、顔が熱くなる。受け入れてほしいとガーネットの瞳をじっと見つめれば、スヴェンに顎を掬われた。
吐息が唇に触れた瞬間、「喜んで」という囁きのあとに口づけられる。彼の熱に触れて、ちゃんとここにいると安心したかったのかもしれない。