赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「ではアルファス様、アルオスフィアの国政を行っているのはなんという機関ですか」
「えーと、議会?」
「議会を構成する四人の公爵と大公様の名前は?」
「セントファイフ公爵、ウォンシャー公爵、あとサザーリンスター叔父さ――大公、あとはー……わかんないよ!」
城内を案内してもらいグレート・ホールで昼食を頂いた後、さっそく午後から授業を行ったのだが、アルファスは早々に根をあげてしまう。
「騎士の名家セントファイフ公爵、商家のウォンシャー公爵、大臣の名家ノーデンロックス公爵、教会の代表者であるガイルモント伯爵。そして、議会の最終決定権を持つサザーリンスター大公です」
つらつらと正解を教えるとアルファスは机に突っ伏して、「そんないっぱい、覚えきれないよーっ」とグズリ始める。
時計を見れば、かれこれ三時間ほど授業をしている。少し休憩が必要かもしれないと思ったシェリーは、歴史書を閉じるとアルファスの頭を撫でた。
「庭園を散歩しませんか?」
「散歩!」
すぐに体を起こした彼は、さっきまでグズッていたとは思えないほど元気そうだ。
「ほらシェリー、早く行こうぜ!」
「はい、アルファス様」
小さな手に引かれるまま、アルファスの部屋を出ると螺旋の大階段を降りて庭園に出る。そこに咲いていたのは、むせ返るような甘い香りを放つ青薔薇だった。
「これは……オンディーナですね」
その花弁を指先でくすぐるように撫でれば、「オンディーナ?」とアルファスが興味深そうに手元をのぞき込んでくる。