赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「私も助からないかと思いましたが、あなたを想うと死ねないと強く思いました。きっと、あなたへこの想いが私を生かしたのだと思います」
手を握り返して微笑むと、スヴェンは眉間にしわを寄せて俯き、ふうっと息を吐きだす。
「スヴェン様、どうかなさいましたか?」
「……病み上がりのお前に、このような願いを口にすることを許してほしい」
俯いたままで表情が見えないスヴェンの顔を覗き込もうとしたとき、後頭部に手を回されて引き寄せられる。
驚きに目を丸くしていると、膝をベットに乗せて屈み込んできた彼に唇を奪われた。
ぶつけた想いごと閉じ込めるように深く重なった唇は互いの体温を分け合って、しだいに熱を持ちはじめる。
彼のぬくもりを感じられる幸せに、涙がこぼれた。
「――愛している、シェリー」
そっと名残惜しむように離れた彼の唇が紡ぐのは、両親を失ってから久しく注がれていない愛情。
シェリーが泣いていることに気づくと、スヴェンは唇で目尻に溜まった雫を掬った。
(人を愛し、愛されるというのはこんなにも幸せなことなのね)
心に咲く枯渇寸前の薔薇が、愛情に潤い満たされていくのを感じる。
「私もあなたを愛しています」
町で出会った頃は、スヴェンとこのような関係になるだなんて想像すらしていなかった。
カヴァネスとして生きると決めてからは、一生独り身でいることも覚悟の上だったのだ。
けれど、運命の悪戯だろうか。今は共に歩んでいきたい人がいる。
「お前の怪我が治ったら、お前のすべてを愛したい」
「え? それはどういう……」
「わからないか、カヴァネスのお前でも」
首を傾げて意地悪い笑みを浮かべるスヴェンに、心臓が早鐘を打つ。顔を赤くするシェリーの顎を掬い上向かせると、再び口づけをした。
「んっ、ふっ」
突然のことで満足に息も吸えなかったシェリーは、すぐに息が続かなくなる。
酸素を求めるように口を開ければ、攻め込むように舌を捻じ込まれた。