赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
六章 命がけの逃亡劇


 怪我を負って目覚めてから四日後、背中の傷は痛むが動けないほどではなくなり、カヴァネスとしての仕事にも復帰していた。


 今日から三日間は学舎での授業のため、スヴェンやアルファスに会えるのは三日後ということになる。


 シェリーは休憩時間になると紅茶と一緒に手作りのをマドレーヌを子供たちに出して、テーブルを囲んでいた。


「先生、国王様にお勉強を教えているんでしょう?」

「国王様ってどんな人?」


 あちこちから質問が飛んできて、シェリーは苦笑いをする。生徒は十三人もいるので、リビングは賑やかだ。

 でもこのざわめきは、孤独を和らげてくれるから好きだった。


「そうね、一生懸命な方よ。皆のように頑張っている人たちが、身分関係なく活躍できるような国を作るために頑張っているわ」


 アルファスが話してくれた国王像を皆に話して聞かせると、「へぇ~」と感心したような声が上がる。


「なら僕は、立派になって国王様を助けてあげるんだ」

「私は、国王様が病気にならないようにお医者さんになるわ」


 ここにいる生徒たちは、皆優しくて賢い。だから、遠くない未来にアルファスの創る国で活躍しているに違いない。そんな光景が、シェリーには見えていた。


「それにしても、即位式が見られなかったのは残念だったよね。前王妃様の体調が優れないんじゃ、仕方ないけどさ」


 そう、即位式の中止は今のところ前王妃の体調不良という理由で御触れが出された。

ただでさえ遅れている即位式を国王が原因で中止されたと説明するのは、民の信頼を失う。

かといって本当のことを話せば、内乱が起きているのではと民は動揺し、他国から好機だとばかりに攻め入られる可能性がある。


 よって、以前から体調不良と公言していたアリシア王妃を理由にするほうが角が立たないと判断したのだ。


「そうね、私も見たかったわ」


 一番残念に思っているのはアルファスだ。
本人は「次があるから大丈夫だ」と強がっていたのだが、それが彼らしくない。いつものアルファスなら、もっと我儘に怒っているところなのに、やけに大人びた反応だったので心配だった。


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