言い訳~blanc noir~
 今朝ブログ更新させたが毛玉からのコメントはまだない。

 たったそれだけの事なのに得も言われぬ不安が押し寄せて来る。

―――毛玉から嫌われたのだろうか。

 なぜそこまで自分がネガティブな思想に苛まれているのかわからない。とにかく孤独が怖くて仕方ない。

 するとインターホンが鳴った。

 モニターに映る夏海の姿に思わず安堵の溜息を零してしまった。

 もう誰でもいい。
 誰でもいいから俺の傍にいてくれ。


 そんな思いでドアを開いた。

「椎名さん? 顔色悪いですけど……大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

 そう言うしかなかった。


 夏海は今日も弁当を持参していた。


「今揚げたばっかりだからアツアツですよー」

 テーブルに揚げたてのコロッケを夏海が置いた。コロッケ以外にホットサンドとサラダも用意してくれていた。

 それを口にしながら夏海と雑談を交わすが、それでも焦燥感という症状なのか、無数の虫が蠢くような胸のざわつきは止まらなかった。

 額に冷や汗が滲み、胸を圧迫されたように息苦しい。

 箸を置き水を口にすると夏海が心配そうに顔を覗き込んできた。

「椎名さん? 本当に大丈夫ですか?」

「ああ……」

「調子悪いんじゃないですか? 横になったほうがいいですよ」


 夏海に腕を引かれ寝室に行く。

 倒れ込むようにベッドに横になると夏海がシーツを掛けてくれた。

「熱あるんですかね?」

 額に手のひらが触れる。その温もりがまるで緩和剤のように思えるほど心地よかった。

「熱はないみたいだけどなぁ。どうしたんですかね?」

 手のひらが額から離れた瞬間、衝動的に夏海の腕を引き寄せていた。

「きゃっ……」と、小さな悲鳴をあげた夏海が胸の中に倒れ込んでくる。

「椎名さん?」

 目を丸くさせた夏海を「ごめん」と和樹が抱きしめた。
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