人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
やがて、夜が更ける。

一度は菊花を退散させたのだ。

しばらくは彼女も蘭花を狙ってくる事はないだろう。

…当然俺は、蘭花を菊花から守る為にこの洋館で世話になる事になった。

蘭花を守る為には常に彼女の側にいるのが一番であるし、何より俺の人型としての体は、人形師である蘭花の手入れが必要らしいのだ。

この人型の肉体を俺が使う限り、俺は蘭花の世話にならねばならぬ。

「すまぬな、面倒をかける」

「いえ」

蘭花は微笑んだ。

「面倒を押し付けているのは私の方ですから…これくらいは当然の事です」

そう言って笑う蘭花は、魔道の世界に生きる人形師とは思えぬほどに、愛らしい普通の娘であった。

そして、それはあの菊花も同様だ。

…このような愛らしい姉妹が殺し合うなどと。

俺は得心がいかなかった。

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