キミに嘘を吐く日
「両親が離婚してからのアイツは、バカみたいに無理して笑ってたな。見てるこっちが気持ち悪いから止めろって言っても、いつも無理矢理笑顔作って貼り付けてた……」


高田くんは窓の外を見ながらポツリポツリと呟くように話してくれた。

窓の外の桜は既に花が散って、青々とした葉桜に変わっていた。

葉桜の緑と空の青が綺麗なコントラストを描いていて、眩しくて目を細めた。

花粉症の脅威は相変わらずで、だけど芝生広場では以前見た時よりも、多くの家族連れで賑わっていた。


「アンタのことはいつからか宇野の視界に入っていたみたいだった。いつも1人でいるアンタを気にしながらも、不思議そうに見ていたな。『1人で寂しくないのかな』ってよく言ってたよ。アイツんち昔から両親があんまり仲良くなくて、長期の休みには必ずじーさんの家に行っていたみたいだ。両親が別れて、アイツを引き取ることで揉めた時も、自分でじーさん達に頼みに行ったらしい。アイツ年末にはじーさん達と暮らすんだって話してたから、その頃には決めてたんじゃないか?」


高田くんが話してくれているのをジッと黙って聞いていた。

口を挟むつもりもなかった。

私は、私が知らない宇野くんのことを、高田くんからたくさん聞きたかったから。

< 60 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop