キミに嘘を吐く日
「なぁ、宇野。この人数の中じゃあまた誰かが迷子ってこともあり得るし、ツーショットで別れて回ろうぜ。昼飯は近くにバイキングの店があるからそこでとればいいから……集合は13時にここの出口で待ち合わせってことで」

「は?川原お前なに勝手に決めて……」

「いいじゃん?ちょうどツーショットで別れてもいいメンバーでしょ?」


西条さんまでその案にのって、皆に了承を得てしまった。


「いろはは、私たちと……」


市原さんが声をかけてくれるのと同時に、川原くんが私の手首をつかんで自分に引き寄せた。

いきなりなことで、バランスを崩してしまって、私は川原くんの胸に倒れ込んでしまう。

がっしりとした胸に抱き止められて、それに気づいて慌てて彼から離れた。


「き、急に引っ張らないで」

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ。いろはちゃんは俺とツーショットね。他のカップルの邪魔したい訳じゃないでしょ?」


耳元で言われた言葉に、皆の方を見る。

そうだ。茶原さんだって、市原さんだって彼氏と過ごすことを楽しみにしてた。これ以上私のことで雰囲気を悪くしたくない。


「市原さん、茶原さん、私川原くんとペンギン館に行こうって話してたんです。またあとで合流しましょう」

「いろはちゃんがそれでいいのなら……私たちは構わないけど」

「ほら、決まり!いろはちゃん、ペンギン館の入り口はこっちだから」


川原くんの強引な手を振りほどけず、私は走るようにして彼のあとをついていった。

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