ホワイトデーの約束
言えない言葉は伝わる心
「久しぶりの再会に、かんぱーい!!」


あちこちからグラスをぶつけ合う音が響く。
23日、華の金曜日。今日は大学のサークルOB達と飲み会だ。

「久しぶりー」と懐かしい面々と言葉を交わしながら、グラスを傾ける。
今日の参加者は30~40人程で、宴会用の大部屋はすぐに騒がしくなった。

同じサークルだった先輩も、もちろん呼ばれているはずだけど、ここには居ない。
きっと今日も仕事が忙しいのだろう。


実をいうと、この前のホワイトデー以来、先輩とはまともに連絡を取れていない。
何度も電話をかけようとしたけど、私より早く出社して遅く帰宅している彼を思うと、どうしても押しとどまってしまった。
だから先輩から連絡が来るのを待ってるんだけど・・・未だ着信もメールもなし。


小さくため息をついて、皆の話を聞いていると嫌な質問がとんできた。


「そう言えば、香奈ちゃんって真人くんと同じ会社行ったんだよね?」


少し身を乗り出すように尋ねてきた宮原先輩は、ウチのサークルでマドンナ的存在だった人で、一時期、瓜生先輩と付き合っていたとの噂もあった。


「は、はい。そうですね」


元気にしてるか、今何をしているのか、口々に聞かれては先輩の様子を話した。
そして、そんな他愛もない会話から話の流れは触れてほしくない方向へ。
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