情熱的に愛して
「市川。」

艶のある声で、門馬が私を呼ぶ。

「な、な、なに?」

恐ろしくて、クッションを顔の近くに持って来た。


案の定、ソファの音で、門馬が私に近づいているのが分かる。

「あのさ。」

私の下に、門馬の影が映る。

「もしかしてだけど……」

門馬の声が、門馬の声が近くなる。

「嫉妬してくれたの?」

クッションをそっとどかせて、門馬の方を見た。


体全体が波を打つように、ドクンッと鳴った。

息をゴクンと飲みこんだけれど、上手く息ができない。

呼吸に苦しんでいる金魚みたいに、口をパクパクさせていた。


あの門馬雪人が、私を見降ろしている。


「も、もも門馬?」

上手く言えない私を、じーと見つめる門馬。

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