子犬とクマのワルツ


商品開発課のフロアへ戻ると、チームメンバーが各々の仕事をしている。
と言っても、今日ばかりは空席が目立つ。

連休にぽっかりとあいた平日ということで有給を取っている社員も多く、主のいない机がいつもより多い。

「園部主任」

席について一息つくと、鈴のような声が俺の名前を呼んだ。
顔を上げると、入社2年目の高山史乃(たかやましの)が立っている。
小柄な身体だが、背をしゃんと伸ばしている。クリクリとした瞳が、活発そうな印象を与え、高い位置に結ばれたポニーテールがふわりと柔らかそうに揺れた。
同時に、コーヒーの香りが鼻をくすぐる。

「おつかれさまです」

彼女の細い手が、お盆にのせていたカップをデスクに置く。
更に、各所の土産菓子が入った小さな袋をカップの横に並べる。
袋には、小さなメモに「園部主任」と書かれてクリップで留められていた。


< 3 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop