エリート上司の甘く危険な独占欲
 直後、勢いよくドアが開いて、梓が飛び出してきた。目に涙を溜め、ペールブルーのブラウスのボタンがいくつか外れていて、レーシーな下着が見えている。

 梓は華奈に気づいて一瞬ギョッとしたが、すぐに泣き声を上げて華奈に抱きついた。

「華奈さん~! 聞いてください! 一之瀬部長がひどいんです。こんなっ、こんなことを私にっ!」

 目を涙で潤ませ、すがるように華奈に訴えた。そのときドアが開いて、颯真が出てくる。

「村上さん」

 颯真の声を聞いて梓はハッとしたように顔を上げ、見る見る顔を赤くした。そしてそのまま廊下を走り出す。

(梓ちゃんをこのままにしてはおけない!)

 華奈は梓のあとを追って走り出した。

「華奈、待って! 違う!」

 颯真の声が追いかけてきたが、華奈は「来ないでください!」と叫んで走り続けた。七センチヒールのパンプスは走りにくく、エレベーターホールに着いたときには、梓の乗ったエレベーターのドアが閉まりかけていた。

「ダメ!」

 華奈は今にも閉まろうとしていたドアの隙間に腕を入れた。ドアが再び開き、エレベーターの中では、麻衣が隅に体を押しつけて震えている。華奈は乗り込んで閉ボタンを押した。
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