エリート上司の甘く危険な独占欲
「梓ちゃん、ちゃんと服を直そう」
「嫌です。私、一之瀬部長にされたことを人事部長に訴えに行きます!」
「梓ちゃん」

 華奈は梓を落ち着かせるようにゆっくりと話しかける。

「梓ちゃん、ごめんね。会議室の前を通りかかったとき、ドアが少し開いてて、話が聞こえてたんだ。だから、一之瀬部長が梓ちゃんになにもしてないことは私が証言するよ」
「えっ……」

 梓は肩を落とした。そもそも梓に呼び出されて会議室に行った時点で、颯真は密室にならないようにドアを開けておいたのかもしれない。

「ついてないの」

 梓はふて腐れた声で言って、ブラウスのボタンを留め始めた。いつのまにか目はすっかり乾いている。

 エレベーターがゆっくりと下降し始め、華奈は頭上の階数表示を見た。三階に明かりが点灯している。華奈は一階のボタンを押した。

 三階で女性社員が二人乗り込んできた。ドアが閉められ、エレベーターはすぐに一階に到着する。

「梓ちゃん」

 華奈は梓の肘を軽く持って彼女を促し、昼間、麻衣と会話をしたカエデの木陰に向かった。
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