エリート上司の甘く危険な独占欲
 男性の冷めた声が聞こえてきた。

(ということは、男の方が外見やステータス目当てで付き合ってたのか?)

 颯真は腹立ちを覚えてふと左側に視線を向けた。カウンター席の左端に並んで座っているカップルを見て、危うく声を上げそうになる。

(あれは、貿易管理部の佐脇課長と川村主任じゃないか)

 仕事上の付き合いしかないが、若くて優秀な二人だ。

(あの二人、付き合ってたのか。それにしても、佐脇課長ってこんな男だったのか?)

 真面目そうな印象を与える彼は、颯真に対しては物腰も丁寧だ。まさか女性に――しかも付き合っていた相手に――こんな心ない言葉を投げつける男だったとは。

「な、ど、どうして」

 驚いた声を上げる華奈の全身を柊一郎がさっと見た。その様子を見て、颯真はああ、と思う。

(佐脇課長はそういう目で川村主任を見てたのか)

 最低な男だな、と思った。
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