エリート上司の甘く危険な独占欲
「派手すぎるんだよ」

 柊一郎の声に嫌悪感がこもっていたが、その彼に対して颯真は嫌悪感を抱いた。グラスを持つ手に、ギュッと力がこもる。

 カウンターの逆側では、華奈が怪訝そうな声を発する。

「え?」
「それに、付き合っていることは秘密にしようって俺が言ったからって、男と二人きりで飲みに行くような女を妻になんかできない。信用できない」
「ちょっと待って、私、そんなことしてない!」
「なに言ってるんだ。ちょうど二週間前の金曜日だ。俺は、華奈がおまえの同期の今川ってやつと二人で居酒屋に入っていくのをこの目で見た」
「それは誤解だよっ。あれは同期会! 私と今川くんだけ仕事が遅くなっちゃって、たまたまエレベーターで一緒になったから、そのまま二人で店に行っただけ。店の中にはほかの同期が四人もいたんだから!」

 華奈の必死の釈明の言葉に、柊一郎は冷たく返す。

「どうだかな」
「どうして信じてくれないの?」
「事実はどうであれ、俺を不愉快にさせたことには変わりはない」
「そんな……ごめんなさい。柊一郎さんがいやだって言うなら、男性と二人きりで歩いたりしないようにする。だから」
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