エリート上司の甘く危険な独占欲
『牧野に聞いたよ。今の彼氏で満足できないからデートしようって誘われたって。華奈がそんなことを言うなんて思わなかった。俺の男としてのプライドはもうズタズタだよ』
『私、そんなこと言ってない!』

 華奈の必死の叫びに耳を貸さず、健太は華奈に背を向けた。

『健太!』

 華奈は一生懸命手を伸ばしたが、健太の姿はだんだんかすんで……ついには闇の中にかき消えた。代わりに、明るい茶髪で耳にいくつもピアスをした牧野の姿が現れる。

『なんで川村みたいないい女が、健太なんかと付き合ってたのかわからないな。俺の方が絶対におまえにふさわしい』

 その言葉にピンと来る。

『もしかして……牧野くんが健太にあんなことを言ったの? “今の彼氏で満足できないからデートしよう”って誘ったなんて嘘をついたの? どうして?』

 牧野はうっすらと笑みを浮かべた。

『俺、ほしいものがあったら手段は選ばないタチなんだよ』
『今の言葉を健太に話すわ。そうしたら、きっと健太は私を信じてくれるはず』

 身を翻そうとした華奈の腕を、牧野が掴んだ。
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