エリート上司の甘く危険な独占欲
(キミとはこれっきりだから、とか、月曜日からもこれまで通りでいよう、とか言われても、動揺しちゃダメ)

 そう思ったとき、運転席から声が聞こえてくる。

「昨日のことだけど」
(来たっ)

 華奈は心の中で身構えながら颯真を見た。傷つく言葉をこれ以上聞きたくなくて先手を打つ。

「大丈夫ですから、私」
「本当に?」
「はい」
「そうか……。忘れてくれるのなら、その方がいい」

 その言葉に、華奈は胸がズキンと痛んだ。

(なかったことにしよう、ときましたか……)

 いくら流された一夜の関係で、先などないのだとしても、慰められ、甘えた記憶は残しておきたかったのに。

「わかりました」

 華奈は低い声で言って唇を引き結び、また窓の外に視線を戻した。



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