エリート上司の甘く危険な独占欲
 華奈は途中だったメールを最後まで入力し、見直しを済ませて送信ボタンを押した。そのときには貿易管理部のオフィスは空になっていた。華奈はノートパソコンを奥に押しやり、デスクに突っ伏す。

 日曜日は一日、家に引きこもって過ごした。本を読んだり、ネットサーフィンをしたりしたが、すぐに集中力が切れた。このままではいけないと思うが、心が元気になるまで、もう少しへこんでいても許されないだろうか。

 華奈がそんなことを思ったとき、耳元で低い声がした。

「泣いてるの?」

 華奈は驚いてガバッと顔を上げた。すぐそばに颯真の心配そうな顔があり、華奈の心臓が飛び跳ねる。

「泣っ……いてません」
「そう」

 颯真は華奈のデスクに浅く腰かけ、右手で彼女の頬にかかっていた髪をそっと掻き上げた。

「なんですか?」
(寝たことを『忘れてくれるのなら、その方がいい』って言ってたくせに)

 華奈は反抗的に颯真を見上げた。彼が小さく首を傾げて言う。

「相原さんたちとカフェで一緒になったんだけど、心配してたよ。『華奈さんが元気ないみたいなんですー』って」
「別に……そんなこと」
「だったら食べに行こう」
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