エリート上司の甘く危険な独占欲
 麻衣にきっぱりと言われ、華奈は苦い笑みを浮かべた。麻衣は華奈に体を寄せる。

「朝、エレベーターの中で彼氏の話をしたときもそうでしたし……」

 麻衣が華奈だけに聞こえるように小声で言った。

「ごめんね」

 華奈は麻衣に言った。

(懐いてくれてるかわいい後輩に心配かけちゃダメじゃないの)

 華奈はできるだけ明るく笑って言う。

「大丈夫だから。ちょっと食欲がないだけなの」
「え~、食欲がないからって、サラダだけじゃ夜まで持たないですよ」

 麻衣が言って、手元のサンドイッチプレートからハムと卵のサンドイッチを取り上げた。

「華奈さん、はい、あーん」
「えっ!?」

 麻衣にサンドイッチを口元に近づけられ、華奈は戸惑ったように後輩の顔を見る。

「食べてくださいっ。食べないと怒りますよ!」
「えー……麻衣ちゃんが怒ってもぜんぜん怖くないんだけど」
「そんなことありません。怖いんですよ、私」

 麻衣がわざと睨んでみせるのがかわいくて、華奈は思わず微笑んだ。子犬みたいな丸っこい目で睨まれても、ぜんぜん迫力がない。
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