エリート上司の甘く危険な独占欲
 健太がホッとしたように言い、華奈は彼を定食屋へと案内する。

「定食屋さんって言っても、若いご夫婦が経営してて、意外とこじゃれてるの」
「へえ、そうなんだ。デートで行くのはどうかな?」

 華奈は古い店をリノベーションした店舗を思い浮かべながら答える。

「うーん、初デートではちょっとやめといた方がいいかも」
「そうなのかぁ」
「でも、いい言い方をすれば趣のあるお店と言えなくもないから、そういうのが好きな人ならいいかも」
「言えなくもないって、どっちだよ」

 健太が苦笑した。

「健太がいいなって思ったら、連れて行ってあげたら?」
「誰を?」

 健太にきょとんとされて、今度は華奈が苦笑する。

「誰って……彼女に決まってるじゃない」
「ああ、俺、今はいないんだ」
「えっ、そうなんだ」

 今は、という言い方だから、彼は華奈と別れてから、何度か恋をしているようだ。

「華奈は?」

 健太に訊かれたとき、目指す店が見えてきた。

「今は……いないかな。ちょっと複雑で」
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