エリート上司の甘く危険な独占欲
「華奈もこれから昼食?」
「うん」
「少し……話をしたいな。いい?」
「いいけど」

 華奈の返事を聞いて、健太はダークブラウンのスーツを着た連れの男性に言う。

「悪い、久々の再会だから、彼女と一緒に食事に行ってもいいかな」
「おう、もちろん」

 連れの男性がニッと笑って、健太の肩を叩いた。

「それじゃ、また一時に」
「ああ」

 健太は連れの男性に向かって片手を挙げた。彼が歩いて行き、角を曲がって姿が見えなくなってから口を開く。

「誘っておいてなんだけど、実はこの辺り、初めてなんだよ。今日は本社で会議があって来ただけで。どこかお薦めの店とかある?」

 健太はバツが悪そうに笑って、後頭部をかいた。こういう実直そうなところは変わっていないようだ。

 華奈はなんとなく懐かしい気持ちが湧いてきた。あんなドロドロした別れを水に流して、出会った頃の友達に戻れるのなら、その方がいい。

 華奈は肩の力を抜いた。

(男性ならがっつり食べられる方がいいよね)
「じゃあ……定食屋さんはどう?」
「華奈はそこで大丈夫?」
「うん」
「そっか」
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