エリート上司の甘く危険な独占欲
「それ、昔から変わってないなぁ。大学の食堂でも、いつもそうやってた」
「だって、『いただきます』って、作ってくれた人や食材に感謝を示す大切な言葉でしょ」
「そうだね、うん」

 健太も同じように「いただきます」とやる。

 華奈はさっそく豆腐ハンバーグを口に運んだ。ふわふわとして柔らかくて食べやすく、ポン酢ベースのタレがよく合っている。

「ん、おいしい」
「生姜焼きもうまいな。女性でもいけそうだね」
「デートでここに来たくなった?」
「彼女ができたらね~」

 健太はあはは、と笑ってから、ふと思いついたように言う。

「そうだ、華奈、藤枝(ふじえだ)って覚えてる?」
「えっと……藤枝さんって……」

 華奈は箸を止めて、記憶をたぐった。

「すごく背が高くてモデルみたいに細い女の子だったよね?」
「そうそう! 藤枝さ、今、ニューヨークでモデルやってるらしいぞ」
「えーっ、すごいね! ニューヨークでなんて!」
「藤枝は父方の祖母がアメリカ人らしいし」

 健太が言って、生姜焼きを口に入れた。

「あー、だからあんなにスタイルがよかったんだ」
「華奈もだけどね」
「もう、私のことから離れてよ」
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