口づけは秘蜜の味
暫しの沈黙の後
神上さんが私の顔の下を覗き込むようにしゃがみこんだ

…目が真ん丸に見開かれている

「あの……舞花の言うオレの婚約者って誰?」

「え……は?」

「いや、だから舞花が言うオレの婚約者って?誰の事だ?」

わけが分からなかった

しらばっくれているのだろうか?
いや、それにしてもわかっていないのか?

本当に不思議そうな顔をしていた

「いや、その…だから舞花が言うオレの婚約者って?誰の事なんだ?」


「だ、だって…あの鍵や花束を投げてた!」


「……まさか、あんな狂暴女の事を言っているのか……オレはイヤだよ…彼女はオレの同級生で弟の彼女!」

「ええ!!」

ヘナヘナと力が抜けてその場にへたりこんでしまった

「だって、話の時に『うちも似たようなもんだな』って!」

「うちは…実家、弟の話だよ…実家で既に一緒に暮らしてるんだあの二人……両親は今海外だから二人きりだけどな」

(ま、紛らわしい!!)

神上さんが私の頬に手を添えた
大きな手がふんわりと優しく動く

「大体…婚約者いるのにこんなにも舞花を口説いてたら…それこそクズみたいなヤツじゃないかオレ…」

優しい甘い光が宿る大きな目が私を離さない

「だから…だけど…私…」

「ちょっと待った……そこから先はダメだ…」

大袈裟に手を振って私の口を押さえる神上さん

「ムム…なん…ですか?…私、雅哉さんがす…「だからダメ、オレから先に言わせろよそれは」

神上さんが私の目を真っ直ぐ見て言った

「…好きだよ…誰よりも可愛い…舞花が好きだ」

「…私も…好き…です」

雅哉さんの唇が睫毛に触れた

「はぁ……なんだよ…可愛い…まだ足んねぇ…」

そのまま玄関先で…

抱き締められたまま雅哉さんのキスを受け止めた
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