鬼女と呼ばれた女王。
この灯国は大陸にある4つの国の中で歴史が最も古く国土が小さいなりにも西の他大陸との貿易で栄えてきた。
そんな灯国には現在二人の王位継承者がいる。
一人は隣国 火国、#__かこく__#の第二王女で正室でもある潤蘭#__じゅんらん__#の娘、舜英。もう一人は灯国の宰相の娘で側室の息子、翠尭#__すいぎょう__#。

現在、舜英は14歳。翠尭は12歳だが国王候補に最も親しいのは男子である翠尭なのだ。

「あなたも大変ね。こんな見捨てられた王女のお守りを任されるなんて。」

舜英が申し訳なさそうに、自嘲気味に笑いながら言うと泡鈴は「そう思うなら死ぬ気で玉座についてください。私のために。」と少しふざけて返すのだ。

泡鈴のこの欲を隠さぬ生意気な態度に舜英は堅苦しい宮中で救いのようにかんじていた。

泡鈴は舜英の事を少しも敬ってないし、舜英も泡鈴に敬われようとしていない。不思議な主従関係だった。

「でも、舜英様。こんな奥の室に毎日毎日籠もって、翠尭一派から更に冷たい扱いを受けますよ。」

「あら、それじゃあ私王宮の人間全てに疎まれるのね。」
ケラケラと笑いながら舜英は言った。

「笑い事じゃありません!全く、こんな王宮の馬番ですら足を踏み入れない廃屋の宮殿に好んでくるなんて舜英様だけですよ。」

泡鈴は、呆れたように言い返すが舜英はどこ吹く風。ちっとも気にしてなどいなかった。

「ここには、王宮では見られない文献が隠されているのよ。王宮の書物は全て読み尽くしてしまったんだもの。仕方ないじゃない。」唇をムッと尖らせてふくれっ面になった舜英。

『ちっ、顔だけは潤蘭様に似て美人なんだから活かせばいいものを』

泡鈴は、かつて舜英の母 潤蘭に仕えており彼女と共に灯国へ入った。
潤蘭は、絶世の美女と謳われその娘である舜英も母によく似て美人であった。
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