恋にはならないわたしたち
誰だと聞きたげにお祖父さんが三池に顔を向けた。
「結婚前提で付き合ってる銀行の同期で真木瑞穂」
無駄のない簡潔な紹介だーーーーーーーーーーーーって、はあぁぁぁーーーーーーーっっ!?
繋がれた手に痛いくらい力を込められ、三池が上から覗きこむように目を合わせてくる。
にこやかな表情のわりにちっとも笑ってない目が『余計なこと言うなよ、わかってんな』と念押ししてきた。
曖昧に笑顔を浮かべる。
「という訳で見合いとか要らんから」
ああ、そういうことですか。
お祖父さん、三池にお見合いをご用意ですか。
それが嫌だから自分を連れてきたんだなと見当がついた。
したらええやん、きっと美しいええとこのお嬢さまやろうに。
断る口実に手近で丁度都合よく間に合う女が自分だったんだなと瑞穂は得心がいった。
失礼な男。
「瑞穂さん?」
「はい」
三池の祖父に名前を呼ばれ、瑞穂が返事をすると満足そうに、嬉しそうな顔をされた。
チクリと瑞穂の良心が痛む。